銘柄選定の理由:防衛省が、宇宙スタートアップの顧客になった

銘柄選定の理由:防衛省が、宇宙スタートアップの顧客になった

子どもの頃、図鑑で見た人工衛星の写真は、ただの銀色の点だった。それでも、夜空を見上げるたびに、あの点のどれかが今も地球を見ているのだと思うと、少し胸が高鳴った。子ども口座を、S&P500超えを狙う夢枠そのものとして運用すると決めたとき、真っ先に賭けたいと思ったのは、その延長線上にある宇宙という分野だった。

子ども口座の金は、教育費とも生活費とも自分のFIRE資産とも別枠にしている。最悪ゼロになっても家計には響かない。だからこそ、多少ロマンで選んでいい枠だとも思っている。ただ、宇宙に賭けると決めたところで、宇宙関連銘柄は他にもいくらでもある。そこから1社を選ぶときの基準は、ワクワクするかどうかではなく、市場規模と技術力と業績成長にした。夢は見るが、無邪気に見るつもりはない。

Synspectiveは、小型のSAR衛星を作って飛ばしている会社である。SARというのは電波で地表を撮る技術で、夜でも、雲がかかっていても地面の様子が撮れる。台風の後の浸水域、地盤の沈み方、道路や橋の変化。目に見えないところで地面がどう動いているかを、上空から撮って売る商売である。宇宙から地球を見張るという発想そのものが、単純に格好いいと思う。ここまでは、正直ただの好みの話である。

この会社を選んだ決め手は、格好よさではなく、国という客がすでについていたことである。宇宙セクターに賭けるにしても、期待だけで金を置く会社と、すでに現実の契約で客がついている会社とでは、安心の度合いが違う。Synspectiveを選んだのは、その基準で見たときに、最も裏付けがはっきりしていたからである。

2026年2月、防衛省は「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」という計画を正式に契約した。多数の小型衛星を空に並べて、地上の画像を継続的に集める仕組みを民間に作らせる話である。この事業を担う特別目的会社に、三菱電機やスカパーJSAT、三井物産といった大手が名を連ね、Synspectiveはその協力企業として、画像データの取得を業務委託される側に入った。契約金額は1,056億円(税込)、期間は約5年。国が、5年分の仕事をまとめて発注したということである。

この契約が、数字にはっきり表れている。

249.6億円 1,243.9億円 2025年12月末 2026年3月末

Synspective 受注残高の推移(同社決算資料より)

2025年12月末時点で249.6億円だった受注残高は、2026年3月末には1,243.9億円まで積み上がった。この間の増加額994.3億円のほとんどが、防衛省の衛星コンステレーション事業(契約額960.7億円・税抜、約5年間)によるものである。受注残高というのは、これから売上として計上される予定の、すでに約束された仕事の量である。「いつか伸びるはずだ」という期待の話ではなく、「もう契約は取ってある」という話である。

ただ、受注残高があることと、今の決算が健全であることとは、別の話である。2025年12月期の売上高は23.77億円、営業損失は41.37億円だった。2026年12月期も、衛星の量産や海外営業のための人員増を含む先行投資が続く見込みで、総収入は160億円規模まで伸びる予想である一方、営業損失はむしろ54.67億円まで広がる予想になっている。経常利益・純利益が黒字化する見通しになっているのは、宇宙戦略基金などの補助金収入や税制上の要因が効いているからで、本業そのものがすでに儲かっているわけではない。

受注残高があるからといって、安心してばかりはいられない。国からの補助金がいつまで続くかも分からない。この先の決算をしっかり見ながら、前提が崩れたと感じたときには売ることも視野に入れて、育てていくつもりである。

この記事は、特定の銘柄の売買をすすめるものではない。子ども口座(S&P500超えを狙う夢枠として運用している)について、どういう判断軸で銘柄を選んだかを残すための記録である。数値は同社の決算短信・決算説明資料に基づく。