S&P500を、信用で持っている
信用建玉がある。すべてS&P500連動ETFだ。個別株を短期で売買しているわけではない。S&P500への投資額を増やすために、信用という枠を使っている、という感覚に近い。現物でS&P500投信を持つことと、信用でS&P500連動ETFを持つことは厳密には違う。金利コストがかかるし、維持率の管理も必要になる。それでも今の自分にとっては、管理できる範囲でレバレッジを使う選択肢はある、と判断した。
不動産は、重かった
もともとレバレッジそのものへの関心はあった。自分の資産だけで運用するのではなく、借り入れや信用を使って投資額を増やす。そういう方法も、選択肢として考えていた。
最初に頭に浮かんだのは不動産投資だ。金融機関から借りてアパートを買い、家賃収入でローンを返していく。うまくいけば大きな資産形成につながる。本を読むほど、その可能性は理解できた。
だが、実際に自分がやると考えるほど、だんだん重くなっていった。物件選び、融資、修繕、空室、管理会社、入居者対応、税金。どれも向き合えば学べることだとは思う。実際にそれを事業としてやっている人はたくさんいる。ただ、今の自分がそこに時間と気力を使えるかというと、正直厳しかった。子どもと向き合う時間も大事にしたい。その時間を削って、新しい事業を始めるような気持ちには、どうしてもなれなかった。
もうひとつ、少し変な理由もある。怪談話や事故物件の話を聞くのが、わりと好きだ。そういう話を聞いていると、不動産を持つということは、家賃収入を得るだけではないのだと感じる。自分の所有する物件が事故物件になる可能性も、ゼロではない。それも含めて向き合える大家さんはたくさんいると思う。ただ、自分がそこまで背負えるかというと、少なくとも今は重すぎた。
すでに知っているものに、少し厚く乗る
S&P500連動ETFの信用取引は、その点でかなり手間が少なかった。
S&P500にはすでに長く投資している。自分なりに理解している対象だ。個別株を当てにいくのではなく、米国株式市場全体の成長に乗る。その考え方は、自分の資産形成の中心になっている。その延長線上で、S&P500連動ETFを信用で持つ。新しい事業を始めるというより、今まで続けてきた投資の枠を広げる感覚だ。ほぼ証券口座の中で完結する。物件を探す必要もなければ、管理会社を選ぶ必要もない。
不動産の融資金利と信用取引の金利コストは、仕組みとしてはまったく違う。ただ「金利を払ってレバレッジをかける」という構造は同じだ。ならば、物件選びから修繕、入居者対応まで背負う不動産より、すでに自分が続けてきたS&P500投資の延長線上で完結する方法の方が、自分には合っていると思った。
信用取引は、使い方次第だ
信用取引は、手持ち資金の少ない人が投機的に利益を狙う手段としても使われる。最近、Xでキオクシアをフルレバレッジで信用取引している投稿をよく見かける。ただ、直近のストップ安で退場している人も少なくないようだ。
自分の使い方は、それとは違う。個別株を短期で当てにいくのではなく、長期で持ち続けるつもりのS&P500に、少し厚く乗るために使っている。用途が違えば、リスクの性質も違う。ただ、どちらにせよ信用取引はリスクの大きい手段であることに変わりはなく、軽く考えていいものではない。
怖いのは、下落よりも「降ろされること」だ
信用取引で一番怖いのは、S&P500が下がること自体ではない。
現物でS&P500投信を持っているだけなら、大きく下がっても持ち続けることができる。精神的にはきつくても、売らずに耐えるという選択肢がある。だが信用取引では、維持率が下がれば、自分の意思とは関係なく売らざるを得なくなる可能性がある。S&P500の長期成長を信じているのに、暴落時に強制的に降ろされてしまう。それが一番避けたい事態だ。
だから、ぎりぎりまで枠を使うつもりはない。購入時に確認したのは、リーマンショック級の下落が来ても追証にならないかどうかだ。リーマンショック時、S&P500はピークから底まで57%下落した。そのくらいの下落が来ても耐えられるか。そこを自分なりに計算したうえで、信用建玉を持つことにした。
計算したから絶対に安全という話ではない。相場は想定を超えることがある。為替も動くし、金利も変わる。それでも、「上がりそうだから信用で買う」という感覚とは違う。暴落時にどこまで耐えられるかを先に見たうえで、使っている。
金利コストと、買い増しの話
信用取引で保有する以上、金利はかかる。現物投信とは違い、持っているだけでコストが発生する。自分が使っている金利は年2%台後半の水準だ。S&P500の長期リターンを考えれば上回る可能性はあると見ているが、それは将来を保証するものではない。相場が横ばいの期間が長く続けば、金利コストは効いてくる。だから信用建玉は、現物投資と同じ感覚で放置できるものではない。維持率と金利コストを、引き続き見ていく必要がある。
最近は含み益も積み上がり、維持率に以前より余裕が出てきた。そのため、そろそろ買い増しも検討している。上がっているから気が大きくなって買う、という感覚ではない。最初に購入したときと同じように、リーマンショック級の下落が来ても耐えられるかを確認したうえで、もう一段厚くできるかを考えている。維持率のシミュレーションにはAIも使っている。計算させれば安全という話ではないが、数字を見ながら考える道具としては、かなり使いやすくなった。
不動産ではなく、S&P500連動ETFを信用で持つ。それが今の自分の生活に合うレバレッジの取り方だ。
