辞め方は、ひとつじゃない。だから計算してみた

辞め方は、ひとつじゃない。だから計算してみた

湯気の立つハンドドリップコーヒー

FIREといっても、一つではない。完全FIRE、サイドFIRE、バリスタFIRE、コーストFIRE、リーンFIRE。挙げ句、「刑務所FIRE」なんて言葉まであるらしい。働かなくていい、ごはんも出る。もっとも、自由はない。……誰が目指すんだ、そのFIRE。

Xで交流していると、「その資産なら、すぐにでも完全FIREできるのでは」と言われることがある。数字だけ見れば、そうかもしれない。確信を持てている訳ではないが、きっとそうなのだろう。

それでも、完全に辞める決断には至らない。理由はいくつかある。例えば、家でごろごろしている父ちゃんの背中を、子どもに見せてしまうことへの恐ろしさがある。社会との繋がりを失うことへの、うっすらとした虚無感もそうだ。会社という枠がなくなった瞬間、自分が何者でもなくなるような感覚は、想像するだけで少し息苦しい。

数字の上での自由と、実際に自由に耐えられるかは、どうやら別の話らしい。ここに気づいてから、完全FIREという選択肢が、以前より少し遠くに見えるようになった。

代わりによく想像するのは、フルタイムではなく、少し余力を持って働く生活である。たとえば、週3日くらい近所の喫茶店でバイトをする自分。大好きなコーヒーの淹れ方を、一から学ぶ。豆の違い、抽出の温度、ミルクの泡立て方。趣味の延長に仕事がある。それでいて、月5万円程度の収入にはなる。学びと両立できて、人との会話もそこにはある。バリスタFIRE、今の私にとって、もっとも現実的な解だと思う。

完全FIREすらできそうな資産をもってもなお、わざわざ喫茶店でエプロンをつけて働きたいと思っている。傍から見れば、矛盾しているように映るかもしれない。ただ、欲しかったのは無限に拡がる自由ではなく、多少の役割、言い換えれば不自由さが残っている自由なのだと思う。

この「月5万円くらいの収入がある生活」と「完全に何もしない生活」とで、必要な資産がどれくらい変わるのか。感覚だけで比べていたのを、数字で比較できるツールを作って確かめた。作ったところで、決断が下りたわけではない。それでも、自分が今どちらの方向を向いているのかは、以前よりはっきりした。

試算ツール 辞め方は、ひとつじゃない

完全FIREと、月5万・10万・15万・20万円の収入がある場合とで、必要資産の見え方がどう変わるかを確認できる。

FIREの選択肢チェッカーを使ってみる

このツールは、自分のためだけに作ったわけではない。私と同じように、完全FIREへの戸惑いを持っている人は多いような気がしている。辞めたいのか、少し働き続けたいのか、その間で揺れている人は、たくさんいるはずだ。同じように迷っている誰かが、感覚ではなく数字で自分の位置を確かめる材料として、このツールを使ってくれたら嬉しい。