札幌市の指定ごみ袋不足をきっかけに、生活費、供給網、石油化学、中東情勢、そしてFIRE後の暮らしの足元について考えました。
今日から、札幌市では少し変わったごみ出しが始まります。
燃やせるごみと燃やせないごみについて、いつもの黄色い指定ごみ袋ではなく、透明または半透明の袋でも出せるようになりました。期間は、2026年6月15日から9月30日までの予定です。
きっかけは、札幌市の家庭用指定ごみ袋が一部店舗で不足していること。
わが家にも、札幌市からそのお知らせが届きました。
最初に思ったのは、「家計的には少し助かるかもしれない」でした。
札幌市の指定ごみ袋は、40Lなら1枚80円、20Lなら1枚40円、10Lでも1枚20円します。一方で、普通の透明・半透明のごみ袋は、商品や厚みによって差はありますが、指定ごみ袋より安く買えるものも多いです。
もちろん、指定ごみ袋はごみ処理費用を負担するための仕組みです。安い袋で出せるなら得だ、だけで終わらせていい話ではありません。
それでも、4人家族で暮らしていると、ごみ袋代も地味に家計に効いてきます。一瞬「助かる」と思ってしまったのは本音でした。
ただ、そのあとで少し引っかかりました。
なぜ、黄色い指定ごみ袋が足りなくなったのか。
そして、もうひとつ思い出したことがありました。
少し前に、カルビーの一部商品のパッケージが、カラフルなものから白黒2色に変わるというニュースがありました。
カルビーは、色を減らす。札幌市は、黄色い袋でなくてもよくする。
まったく別の話のようでいて、どちらも「色のついた袋」が、少しだけシンプルな姿に戻っているように見えました。
黄色い袋には、制度も詰まっていた
札幌市の指定ごみ袋は、普段は「黄色い袋」として見ています。
燃やせるごみを出すとき、燃やせないごみを出すとき、あの袋に入れて出す。それが当たり前になっています。
でも、よく考えると、指定ごみ袋はただの袋ではありません。
ごみを入れるための袋であると同時に、ごみ処理費用を負担していることを示す仕組みでもあります。だから、普段は何でもいい袋ではなく、指定された袋で出す必要があります。
今回、その指定が一時的にゆるみました。
黄色い袋でなくても、透明または半透明の袋でよい。袋の機能としては、ごみを入れて運ぶことです。でも普段は、そこに「黄色であること」「指定袋であること」「お金を払っていること」の意味が乗っています。
在庫が足りなくなると、袋から「指定という意味」が一時的に外れる。
そこが少し面白いと感じました。
生活から、色が少し消えている
少し前に、カルビーの一部商品のパッケージを白黒2色に変更するというニュースがありました。理由として示されていたのは、中東情勢の緊迫化に伴う一部原材料の調達不安定化でした。
もちろん、カルビーのパッケージと、札幌市の指定ごみ袋不足が、同じ原因だと決めつけるつもりはありません。お菓子の袋とごみ袋では、素材も用途も仕組みも違います。
ただ、並べてみると、少し不思議です。
カラフルなお菓子の袋が、白黒になる。
黄色い指定ごみ袋が、透明袋でもよくなる。
どちらも、生活の中にある「色のついた袋」が、少しだけ簡素な姿に戻っているように見えます。
普段、色はあまり意識しません。ポテトチップスの袋はカラフルで当たり前。札幌市のごみ袋は黄色くて当たり前。
でも、その色をつけるにも材料が必要です。印刷するにも工程が必要です。指定された袋として作り、流通させ、店頭に並べるにも仕組みが必要です。
そのどこかが不安定になると、まず「色」や「指定」が外れていくのかもしれない。
そんなふうに見えました。
ごみ袋の奥には、ナフサがある
ごみ袋について調べていると、ポリエチレンという言葉が出てきます。
ポリエチレンは、ポリ袋や包装フィルムなどに広く使われているプラスチックです。さらにその奥をたどると、ナフサに行き着きます。
ナフサは、原油から作られる石油化学製品の原料です。ナフサからエチレンなどが作られ、その先にポリエチレンがあります。
つまり、家のごみ箱にかけている袋は、大きくたどると、原油や石油化学の流れの先にあります。
ごみ袋は、ただの生活用品だと思っていました。
でも実際には、原油、ナフサ、ポリエチレン、製造、物流、小売店という流れの先にあるものでもあります。
普段はまったく意識しませんが、品薄になると、その奥にあるものが急に見えてきます。
「足りないかも」が、本当に足りなくする
今回の札幌市の指定ごみ袋不足について、直接の原因としてあるのは、購入量の急増です。
「足りなくなるかもしれない」と思った人が、いつもより多く買う。すると、店頭の在庫が減る。店頭の在庫が減ると、それを見た人がさらに不安になる。そしてまた買う。
こういう流れは、生活用品でも、投資でも、少し似ている気がします。
本当に足りないかどうかよりも、「足りなくなるかもしれない」という不安が先に動く。その不安が人の行動を変え、人の行動が実際の不足を作ってしまう。
不安による買いだめと聞くと、オイルショック時のトイレットペーパー騒動を思い出します。もちろん、当時の状況を実体験として知っているわけではありません。
でも、「足りなくなるらしい」という不安が広がり、人が一斉に同じ方向へ動くと、必要以上に不足が強く見えてしまう。その構図には、似たものを感じます。
今回の不足を「原料が尽きたから」と単純に言うのは違うと思います。
札幌市は、家庭用指定ごみ袋の購入量が急増し、一部店舗で在庫不足が起きていると説明しています。つまり、直接の原因は、原料そのものが今すぐなくなったことではなく、購入量の急増や買いだめによって、店頭在庫のバランスが崩れたことだと見るのが自然です。
ただ、その買いだめを生んだ背景には、中東情勢やナフサ供給への不安があったようにも見えます。
直接の原因は買いだめ。でも、その奥には不安がある。
そこに横たわるのは、原油やナフサや世界情勢への不安です。
そう考えると、札幌市のごみ袋不足は、思ったよりも遠いところとつながっていました。
遠い海峡が、台所まで伸びてくる
ホルムズ海峡や中東情勢と聞くと、かなり遠い話に感じます。ニュースではよく目にします。でも、自分の生活とは少し距離があるように思っていました。
ところが、原油からナフサが作られ、ナフサからプラスチック素材が作られ、その先にごみ袋や食品包装がある。
そう考えると、遠い海峡のニュースが、急に家のごみ箱のところまで伸びてきます。
お菓子売り場のパッケージにも伸びてきます。台所にも、玄関にも、スーパーの棚にもつながっている。
もちろん、すべてを一本の線で単純につなげることはできません。
でも、まったく無関係だとも思えません。
黄色いごみ袋が透明袋でもよくなった。カラフルなお菓子の袋が白黒になった。生活の中から、少しだけ色が消えている。
その奥に、素材や流通や世界情勢の不安が見える。
今回、私が面白いと思ったのはそこでした。
資産額だけでは、暮らしは守れない
FIREを考えていると、どうしても資産額や利回りに目が向きます。
いまの資産はいくらか。年率何%で運用できるか。生活費はいくら必要か。
もちろん、それは大事です。
でも、実際の暮らしは、もっと地味なものの上に乗っています。
ごみを出せること。食品がいつもの包装で並んでいること。ガソリンが入れられること。スーパーに日用品があること。自治体のサービスが安定していること。
そういう足元があって、はじめて生活は成り立ちます。
資産があれば、ある程度の価格上昇には耐えられるかもしれません。
でも、お金があっても、店頭にモノがなければ買いようがありません。生活インフラや供給網から完全に自由になることはできないのだと思います。
札幌市から届いたごみ袋のお知らせを見て、最初は「家計的には少し助かるかもしれない」と思いました。
でも、少し調べてみると、黄色い袋の奥に、ナフサや中東情勢や買いだめ心理が見えてきました。
ごみ袋も、ポテトチップスの袋も、ただの袋ではなかった。
色をつけるにも、指定された袋として流通させるにも、素材と仕組みが必要だった。
FIREを目指すなら、資産だけではなく、暮らしの足元にも目を向けておきたい。
そんなことを考えた、札幌市の指定ごみ袋のお知らせでした。
出典・参考
-
札幌市「家庭用指定ごみ袋に関する臨時的対応について」
https://www.city.sapporo.jp/seiso/yuryoka/shiteifukuro_rinzitaiou.html -
カルビー株式会社「中東情勢の影響による一部商品仕様見直しのお知らせ」
https://www.calbee.co.jp/news/pdf/4227-34957.pdf

